【太陽と月】







一人が寂しいって。


気付くのはとても勇気の要る事。












不思議だけど。




人間ってひとりぼっちじゃ生きていけない様になってて。














誰かや何かを求めようとする。

















少しでも温度を感じていたい。


この指に絡めて、何処へもいけないようにしていたい。









そうする事で得られる安らぎを、人間は知っている。
















だから。













一人ぼっちの私が。


一人が寂しいって気付いてしまうのは。




















この世界で生きていけなくなるのと同じ事だった。
































だから私は気付かないフリをする。








ただの強がりに見えても。












私がこの孤独に冷たい世界で生きて行く為には。



どうしても必要な事だったから。




















こぼれる涙も、気付かないフリして、隠してたあの日。










* * *









ゆっくりと光が差し込む。


カーテンの隙間から優しい光がこぼれていた。













そっと寝返りをうつと、私よりひと回り大きな背中がそこにあった。




寝息も聞こえない程静かに眠る彼だけど、呼吸で体が僅かに上下するのが見て分かる。

均一な感覚で繰り返されるその仕草。





まだ眠っているのだと分かって、何だかくすぐったい気分になる。

















暗がりで見えなかったものが、朝日に照らされると鮮明に現れていた。



背中に残っている傷跡に気付いて、私は少し眉をひそめる。

そして、自分の手に視線を落とした。













この、手で。



この爪で。










強く残した愛の証。















その背中から少し離れた位置には、彼が知らない誰かから受けた傷の跡がある。














私の手も、同じように彼を傷つけているだけ。















この傷がずっと消えずに残ればいいのに、なんて。




そうしたら私の事忘れないでしょう?…だなんて。








そんな、痛みでしか望めない絆にすがろうとしているなんて。




















彼を傷つけた誰かと、私は同じだ。


自分の利益の為だけに、その傷を与えたのならば…同罪だ。


































一人になるのが恐かった。



真っ赤に燃えるセツルメントを目の当たりにして。

一人ぼっちの家に帰るのかと思うと、恐くて仕方がなかった。















昨日とは違う何かが起こった狼煙に。


私は何より孤独に怯えた。
















だんだんと小さくなる歩幅。


帰りたくない、訳じゃない。







ただ何処へ行っても、この恐怖から逃げられないのだと知っていたから。






一人ぼっちの部屋に帰ったら、きっと泣いてしまう。





















そう…思っていたの。























だから彼を見つけた時、恐怖よりも先に嬉しさが駆け巡った。








何処へも行かないで。


私の傍に居て。






だって貴方…動けないでしょう?















都合のいい言い訳ばかりが脳裏をよぎって。




































それでも貴方は優しかった…。
































傷の残る背中を見つめる。




(…ごめんね?)









静かに心の中で謝罪すると、ゆっくりとその背中に額を寄せた。

触れると余計に感じる、彼の鼓動。


彼の体温。




私が一人じゃないという証ー。













こんな傷を残したい訳じゃないのに、どうして痕は残るんだろう?















本当は、もっと違う何かを貴方にあげたいのにー…。




































突如。








起き上がった大きな背中。


びっくりした私の体は強張る。





















「…おはよ。」




「…おはよう。」










振り返った彼は、私の顔を見ると安堵した様に、ため息まじりで呟いた。














「どうしたの?恐い夢でも見た?」







夢見が悪いのは以前からの事だった。



追われている身なのだから、恐怖が先立つのは仕方がない。

こんな風に、突然起き上がったのも一度や二度じゃない。














落ち着いて、眠れる場所もあげられないのね。…私。
















「恐い…。」














覚醒しきっていない彼が、柔らかい髪を掻きあげる。





サラサラと落ちる髪の隙間から、いつもは見えない右の瞳が鈍く光っているのが分かった。






















「恐い…けど、夢じゃない。」








ぼんやりと、独り言の様に告げる彼。












「夢じゃない…って?」









私の問いに、ゆっくりと体ごと私の方を向いて、言った。





























「君が、泣いてる気がした。」
















不意打ちの様なその言葉に、私は思わず息を飲む。





























「気のせいで、よかった。」








言いながら、笑顔を私に向けてくる彼。









どうしよう。


その言葉に泣きそうになっている私。

笑顔が眩しくて。

















まるで優しいお日さまみたいな、光。

















おかしいね。


日を見ているのは貴方の方で。







窓に背を向けている私が眩しいなんて。






















そんなことあるわけないのに。























「君の笑顔、お日さまみたいで、好きなんだ。僕。」




















光の渦に溶け込む感覚。



それはとても幸せなぬくもり。































「私も、好きよ。」

















あなたのことが。






























あなたの光が私を照らす。


深い闇の奥から、強い孤独の中から。


























貴方と迎えた今日という日に、今はただ感謝して。



私は貴方にキスをした。









end...
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------

お正月だしと、日の出をテーマにして書いてみたss。ノウェのイメージが「光」だという事で、その辺と絡ませてみました。
タイトルは後になって思いついたんですが、太陽の光によって輝いている月を二人の関係に置き換えてみたり。
個人的にノウェは月の光だと思ってるんですが、今回は太陽の光って事で。月がキヨ。

--------------------------------------------------------------------------------------------------------------
<TEXT>