>>デラシネ.04





「何か、面白い事になってるみたいねぇ。」





声を掛けられて、振り返るとそこにはウーノが居た。

「何。」

明らかに不機嫌そうな声を出して、敬遠するノウェム。
この間セクスに話したばかりなのに。次はウーノか、と半ばうんざりしていた。
一体どこまで『仕事』の事が広がっているのか。


「勝手に怒らないでよ。私が悪い訳じゃないんだし。」


『面白い事』と言われて、正直腹が立っていた。
見ているだけの立場なら、さほど重要視する様な事では無いのだろう。
しかし自分は当事者で、実際は苦労の連続だ。それを『面白い事』で片づけられては堪らない。



「用が無いんなら、行くよ。」



つい、と踵を返して行きかけたノウェムにウーノは慌てて話を続ける。



「待って。先生から『仕事』を貰った時に、あんたにって伝言頼まれたんだ。」



それを聞いて、再度ウーノの方にゆっくりと振り返った。

「何。」

そもそも先生が伝言する事自体がおかしな事なのだが、深く考えないようにした。




「『仕事』だよ。悪魔の子が、現れる。」

「…悪魔の、子。」




悪魔の子、ギルガメッシュと同じ力−デュナミス−を持ちながら、敵対する子供。
世界の浄化を邪魔しようとする者の元に集まった子供の事を、そう呼ぶ。


「…それで?」

「『悪魔が先生の子供達を狙っている』って。」


聞いた途端ノウェムはウーノの顔を見た。ウーノの表情も真剣だ。


「…それから?」

「『悪魔の子は、洋館に現れる。子供たちはこの洋館に逃げ込んでくる。』」


言って、ウーノはノウェムの額に自分のそれを当てた。
途端映像が、頭の中に入り込んでくる。古びた洋館。人の住んでいる気配は、ない。



「…うん。」



場所が分かって、頷くノウェム。
額を離して、続ける。





「『悪魔は子供たちに知恵を与えようとしている。その知恵を得れば、やがて子供たちと我々は敵対することになるだろう。』」


「…それだけ?」





いいえ、と更にウーノは続ける。





「『悪魔に味方するなら、私は子供たちを殺さなければならない。だから、悪魔に会わせないで欲しい。』…そう伝えてくれって。」





曖昧にはしているが、子供たちに会うように仕向けているのだとすぐに分かった。
洋館で待ち伏せずとも、こちらから仕掛ける事も出来るハズ。
わざわざ洋館と指定したのは一度子供たちに会えと言っている様なものだ。




「分かった。」




丁度子供たちに、会いに行こうと思っていた矢先の事だ。
自分たちの考えなど、先生には筒抜けらしい。
ならば会うまでだ。と再び踵を返す。

「ちょっと。」

再度ウーノが引き止める。腕を掴んで強引に向きを変えさせた。


「待ちなさいよ。先生に何か頼まれてるんでしょう?だから子供たちを守りに行くんでしょう?」

「うん。」


と言いながらも、ウーノが事の全貌を知らなかった事に少し驚いていた。
てっきりセクスあたりから一部始終聞いたのかと思っていたのに。



「私も手伝うわ。」



意外な申し出に、驚くノウェム。




「でも、仕事があるだろう。」

「すぐ終わるもの。大丈夫。いいから手伝わせてよ、だって。」




言いかけて一瞬、言葉を詰まらせる。





「…なんだか最近、とても大変そうよ。」





と、ため息を吐き出すかのように、呟いた。
その言葉を聞いて、ムキになってしまっていた事を後悔した。

そういえばオクトにも、以前言われたばかりだ。『すぐ自分一人で抱え込む』と。
悪い癖だと自分でも思う。





「実際、大変なんだけどね。」





ようやく笑顔を見せるノウェム。


「でも、大丈夫。一人じゃないから。」


オクトもセクスも、力になると言ってくれた。


「本当に、大丈夫なのね?」

「うん。」


ノウェムのその言葉を聞いて、諦めたのかため息を一つつくと、掴んでいた腕を放した。


「じゃあ、気をつけて。」

「君も。」


ウーノは一瞬はにかむ様に笑うと、一瞬にして姿を消した。



「さてと。」



残されたノウェムは、一言そう呟くと、今度こそ踵を返して歩き出した。







* * *







ウーノから聞いた事を、かいつまんでノウェムは二人に説明した。

「なんか、バレバレだね。」

さすが先生だ、と関心しているのはセクス。



「こっちの苦悩もお見通しって事か。」


不服そうに腕を組みながら、オクトはノウェムの顔を見た。

「理由なんて、何でもいいよ。とにかく折角の機会だから、行ってみようと思う。」

この件に関して、既になるようになればいいと思っているノウェムには、先生の真意などどうでもよくなっていた。
それよりどんな方法でもいい、とにかくこの『仕事』をきちんとこなせれば、それで良かった。

「俺も行くよ?」

言い出したのは俺なんだから、ついて行って当然。といった口調のセクス。

「俺も行く。」

先生の子供に、興味がある訳ではないが、悪魔の子が現れるというのに、この二人だけ行かせるのは心配だった。


「ありがとう。」


そう言って笑うと、ノウェムはまず近くにいたセクスを引き寄せ額を合わせる。
暫くして、離れると今度はオクトと額を合わせた。



「…ふーん。」



ノウェムとオクトが額を合わせているのを横目に、頭に入ってきた情報に関心する。


「美人な子だね。先生の子供。」


関心する所がそこか、とオクトから離れたノウェムは思わず呆れた表情になる。

「俺はそれよりも、クローンの方にびっくりだな。」

見れば見るほど、先生そのものだ。クローンなのだから、当然と言えば当然なのだが。




「…こんな事言ったら、怒るかもしれないけど。」




節目がちに、ノウェムが二人の方を向く。







「出来れば二人を、ココに連れてきたいと思っている。」







「…!!?」





二人ともが驚いた表情になる。いきなり何を言い出すのかと。



「見ていて、いつも哀れに思っていた。」



そう、こんな世界に生まれたが為に、肩を寄せ合うように生きているこの姉弟を見ているのは、どちらかといえば辛かった。
やがて浄化によって消えてしまう命なら、せめてその日まで幸せであれるようにと。
それなら、人間の住まう世界よりはよっぽど、ここに居た方がまだマシなのではとずっと思っていた。

「確かに。」

ここには、彼らを追う者は居ない。


「だから俺、人間って嫌い。」


同じ種族なのに、労り合う事を知らない。オクトは人間のそういう所が根本的に嫌いだった。
その態度に苦笑しながらノウェムが続ける。


「それに、悪魔から守るなら、手元に置いておく方が都合がいい。」

「そうだね。先生も、喜ぶかも。」


ノウェムの意見に、素直に賛同するセクス。


「…他の仲間がどう言うかは知らないけど。」


それとは対照的に、慎重に言葉を足すオクト。


「いいんじゃない?俺も賛成。」


そう言ったオクトを、意外そうに見つめるノウェム。



「何。」

「いや、ごめん。賛成してくれるとは思ってなくて。」

「そう。俺が言うのは意外ですか。」



ふーん、と腕を組んでノウェムをじろりと見る。当然、本気で怒っている訳ではない。




「ありがとう。」




一言だけ、そう言って目を伏せた。

不思議なもので、彼の言うお礼の言葉には、なんとも言えない甘さを含んでいる。
この言葉を聞くだけで、何かが解けてしまうような、そんな感覚。


すっかり毒気を抜かれてしまい、参りました、とオクトは軽く両手を上げた。





「じゃあ、行きますか?」





とセクス。
















始まる瞬間。

















己の信じる道を、行けばいい。


























だが、その先には、既に完成されたシナリオ。





































どんな結末が、待っているかも知らずに。

























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>>今回の捏造小話
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