| >>デラシネ.06 |
二度目は、もっと散々だった。 結果が、ではない。 彼女の『音』が、全くと言っていい程聞こえなくなっていたのだ。 悪魔のせいだ。 そう思った。 僅かな時間の間に、何か知恵を吹き込まれ、結果、これまで以上にココロを閉ざしてしまったのだろう。 そうとしか思えない。 優しさを差し伸べても、恐怖し手を取らない。 少なくとも、初めて会った時にはまだ、こんな風にはっきりと拒絶はしなかった。 このままではいけない。 そう思った。 悪魔の子との二度目の戦闘。 今回はウーノも加わってくれていた分、こちらが優位だった。 そしてノウェムは一人、姉弟と再び接触する。 「君たちのお父さんだよ。」 事実を告げても、姉弟は拒んでまた逃げた。 (言葉を交わすのは苦手だ。) 先生の事を、上手く伝えられなかったのかもしれない。とノウェムは後悔した。 そして、覚醒は起こった。 姉を守る為に弟がデュナミスを解放したのだ。 先生の恐れていた事は、この事だったのかと、その時初めて理解する。 しかもその時の衝撃波で、ウーノが負傷してしまう。 予想外の出来事に、再び引くことを余儀なくされた。 * * * 「大丈夫か。」 辛そうなウーノに、声を掛けるセクス。 「治るのに、ちょっと時間かかりそうだね。」 傷口を見て、呟くノウェム。 体を構成している一部分が、欠けているのだ、空いた傷口はすぐ塞がるが、失った分子は新たに作りださねばならない。 そういう意味で、時間が掛かるという事だ。 「ごめん。なんか足手まといになっちゃったね。私。」 ウーノが申し訳なさそうに呟くので、そんな事ない、と首を振った。 「…もう、手遅れなのかもしれない…。」 突然ノウェムが言い出す。 何が?と不思議そうな顔をしている三人をゆっくり見ながら、続ける。 「悪魔は既に子供たちに知恵を吹き込んでしまったようだ。先生の仰る通りなら、彼らはやがて僕達の敵になる。」 「戦うの?」 「いずれ、そうなるだろうね。」 ふーん、と無関心そうに頷くセクス。 今は守ろうとしているものを、今度は敵として排除するなんて、という矛盾は感じていない。 敵になった瞬間から、排除しなければならないものになる言うことは、例え相手がギルガメッシュ同士だったとしても至極当然の理屈だったからだ。 「お前は、イヤそうだな。」 そうなるだろうね、と言いながら表情の固いノウェムに気づいたオクトは問う。 「ちょっとね、悲しいだけ。」 先生の子供なら、分かり合えるかもしれないと思っていた。 先生の考えている、壮大な計画も理解し合えると。 それが残念だった。 「じゃあ、奪いに行く?」 その言葉に、はっとしてオクトの顔を見る。 笑ってはいるが、冗談ではなさそうだ。 「もう、これで最後。」 もともと、連れてくるというのは先生からの指示ではない。 悪魔と子供たちが接触してしまった時点で、今回の『仕事』は終わるはずだった。 今は自分たちで勝手に判断して行動しているだけ。だから手遅れと分かった時点で、身を引けばいいだけの事。 本当は、連れていきたかったけれど、これは個人的な未練だ。 だからこそ、『手遅れかもしれない』と自分から切り出したのに。 「どうする?」 お前の考えている事くらい、お見通しだよ。といった表情でオクトは更に問う。 未練があるなら、手を尽くしてみればいい。 それでもダメなら諦めも付くだろう。そうしなければ、肝心な時に迷いが生まれる。 オクトはそれを恐れた。 「どうするの?」 意味がよく分かっていないながら、セクスも同じ事を聞く。 セクスの場合、ノウェムに付き合って子供たちを連れていこうとしているだけなのだ。 彼がやめるといえばやめるし、連れていきたいといえば協力するまでの事。 ウーノは黙ってノウェムの判断を待っている。 張りつめる空気を感じて、ノウェムは一つため息を付いた。 「…これで最後にする。」 もう一度、会いに行こう。 悲しい音を奏でる君に。 もう、何もかもが手遅れなのかもしれないけれど。 でもあの時、確かに感じた。 このままでは、いけないと。 そこに居たら君は。 間違いなく不幸になる、と。 僕はただ。 そこから君を連れ出したいだけなんだ。 |
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>>今回の捏造小話 |
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