>>デラシネ.07





負傷したウーノを置いたまま、敵地に乗り込むのは危険だと判断し、回復を待つことにしたノウェム。











「なんか、要るものある?」

「…さっき水、くれたじゃない。」

「他は?ない?」

「…喋るのがしんどいから、ちょっとそっとしといてくれる?」








ウーノとセクスのやりとり。










「そういやさ、聞いてよ。」

「…何よ。」










心配でしょうがないのだろう、セクスは先程からずっとこの調子だ。
ウーノも心配して貰っているのが分かっているからか、怪我が痛んで辛そうだが相手をしている。



そういえばオクトが居ない事に気が付き、ノウェムは屋上へと上がる。

朽ちているドアを音を立てながら開けると、そこにはオクトとそれに群がる鳥達が居た。






「何してるの。」






ゆっくりと歩み寄りながらオクトに声を掛ける。



「見て分からない?」



ごはんをあげているんだよ。と言葉を付け足す。

その答えにふぅん、とさほど興味なさそうに相づちを打つノウェム。





「そんなものどこから。」

「食料がしまってある所を見つけてね。」




いくら見つけたからといって、それを鳥の餌にしようなんて考えるのは彼くらいだろう。




「今日はもうおしまい。」




そう言うと、手を軽く叩きながらこちらの方へ視線を移した。




「まだ、残ってる。」




ノウェムは彼の手にある袋に視線を落として言った。
鳥たちもまだ、物欲しそうにオクトの周りを飛んでいる。


「あげすぎても、ダメなんだよ。」


そう言いながら、太陽の陽が眩しかったのか、一瞬目を細めた。




「…悪いね。こんな事に付き合わせて。」




ぽつり、と独り言の様に呟いたノウェム。
ゆっくりとオクトから視線を外すと、そのまま朽ち果てた飛行場の方へと視線を移した。
昇る朝日が、大地に長い影を作っている。



先生から『仕事』を仰せつかったのは自分だけなのに。
気づけば皆を巻き込んでいる。
それが申し訳なかった。



「…。お前一人の問題じゃないんだからな。」



そんなノウェムの態度に、少し呆れながら歩み寄る。
カツカツ、と地を踏む音が規則的で彼らしい。


「先生から『仕事』を受けた時点で、それは俺達全員の『仕事』になるんだからさ。」


言いながらぽん、とノウェムの肩に手を置く。
その力強さが嬉しかった。






「ありがとう。」






何度感謝しても、足りなかった。








* * *








その日は静かな夜だった。


「もう、大丈夫?」

「うん、もう平気。」


回復したウーノを連れて、悪魔の住む屋敷へ。
この間のように正面から行っては、こちらが不利なだけだ。作戦を、立てた。

悪魔に知恵を吹き込まれる前に、彼らを戻そう。
そうすれば、またココロが揺らぐかもしれない。
今度は、その隙を逃さなように。



「二人は何処?」

「…あそこ。」



言って、オクトがそこを指し示す。


「音楽が流れてる。」


ゼータクだね。と笑うセクスに、


「警報用だよ。油断するな。」


しっかりと念を押すとノウェムを先頭に、建物へと侵入した。








鳴り出す警報、しかしこれも作戦の内だった。
警報を仕掛けていると言うことは、警報が発動するまでは油断してますと言っている様なものだ。
そんな状態から状況を把握して行動するには多少なりとも時間を喰う。
それを狙った。

思惑通りパニックになっている建物内。



そして再び、姉弟と接触する。
あの日、あの場所を再現した部屋の中で。



強引にあの日に戻された姉弟は、何が起こっているのか把握出来ないまま、ノウェムに連れられ、部屋に通される。
あの時と同じ人達、同じ会話、時間が戻ったかのような、錯覚。


(でも、騙されない。)

「…座らない?」

(貴方も利用したいだけなんでしょう、竜也を。)


首を振る紀世子。
しかしいくら強がっていても、ココロの音が、揺らいでいるのがノウェムには聞こえた。
むしろ以前より激しいくらいに。


(今度こそ…。)


自分たちの事、分かって貰えるかもしれないと思った。






















「ここには必要なものなんて何ひとつない。」


(だって君の傍には奪う者ばかり。)





























「そのこと、気づいているよね。」


(ココロがそう言って、泣いてる。)










































「前会ったときは、そんな翳り、なかったのに。」


(君を独りにしようとしているのは…誰?)














































(…誰?)














じっと見つめられ、言葉に詰まる紀世子。
言いたい事は沢山あるのに。
言わなければいけない事が、沢山あるのに。
声に出せないのは、その言葉が偽りであると知っているから。




「だって…」




振り絞るように出した声は、か細く僅かに震える。






「さみしくなんか…ないもの。」






嘘の言葉を紡ぐのは、慣れているハズなのに、心臓の音がどくどく言ってうるさい。

私が、しっかりしないといけないのに。



「君も来るだろう。」



僕たちは、何も奪ったりしない。

傍に居たいならずっと、一緒にいられるようにしてあげる。

迷う事なんて、ないのに。






心の中を見透かされた様な言葉の数々。
困惑する姉弟。
もう少し、と思った瞬間だった。
あの日の空間に、イサムが割って入ったのは。




(もう少しなのに。)




思った瞬間、オクトの言った言葉が脳裏をよぎった。






『じゃあ、奪いに行く?』






とっさに紀世子を連れてその場を去るノウェム。
それに続き、慌てて去る2人に竜也も…と、ウーノが連れていこうと手を伸ばす。


「行くな!」


鋭く叫んだイサムの一言で我に返る竜也。
ウーノは仕方なく竜也を置いたままその場を後にした。













残された部屋には、はらりと羽根が落ちるのみ。







































紀世子の行方は分からないまま。

















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>>今回の捏造小話
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