| >>デラシネ.16 |
「おかえり。色々と、ご苦労だったね。」 「…ご心配を、お掛けしました。」 「心配なんか、していないよ。」 「…。」 「何処にいたのか、ちゃあんと知っていたからね。」 「…何故。」 「何故、知っていたのなら。もっと早く、迎えに来て頂けなかったのですか。」 「…君には、お礼を言わなければならない。」 「?」 「娘を。紀世子を、愛してくれたね?」 「…。」 「これで、終末は完全なものになる。君のおかげだ。」 「…。仰っている意味が、よく分からないのですが。」 「君には、話していなかったね。」 「…。」 「何故、娘を愛して欲しいとお願いしたのか。」 「…はい。」 「君は、何も知らなかっただろうけど。」 「人とギルガメッシュが交わるという事は、神の行為に等しい。」 「…。」 「紀世子は、君の持つ『神の遺伝子』を受け継ぐ『器』として、選ばれていた。」 「『神の遺伝子』は紀世子を母胎とし、紀世子自身が新しい世界の最初の人類として、生まれ変わる事となる。」 「そう、定められていた。」 「…仰っている事が、よく、分からないのですが。」 「この事実を君に伝えなかったのには、訳があってね。」 「私は、新しい世界に生まれる最初の人間は、愛されて生まれるべきだと、考えていた。」 「望まれもせず生まれる生命が、素晴らしい人間になるとは、思えなくてね。」 「だから君には。心から紀世子を愛して欲しかった。」 「あえて強要しなかったのも、その為だ。」 「でも、君は紀世子に愛を持って交わり、その『神の遺伝子』を紀世子に与えてくれた。」 「これで、新しい世界に必要なものは、全て揃った。」 「本当に、ご苦労だったね。」 「だから…。『仕事』が終わったから、今頃になって迎えに来たのですね。」 「そうだよ。あれ以上、紀世子の傍にいる必要はない。」 「先生。僕は、そんな事を知りたい訳では無いんです。」 「では何を知りたい?」 「『生まれ変わる』って。どういう事ですか?」 「…言ったよね。『神の遺伝子』を受け継いで、新しい人類に。」 「…『生まれ変わる』という事は…。」 「彼女は、死ぬんですか。」 「それは、生まれ変わる為の、一つの通過点に過ぎない。」 「では、死ぬんですね。」 「結果から言うと、そうなるね。」 「僕が、殺した。」 「それは違う。君が与えたのは、新たなる命。今の命は進化の為の代価に過ぎない。」 「でも、彼女という人間は、いなくなる。」 「どこにも。」 「それは、死んだと同じ事。」 「…まだ知らない様だから、教えておくけど。」 「既に、紀世子は『進化』し始めている。」 「?!」 「君の言い方を借りれば、『死んで』しまったよ。」 「忘れないで欲しい。君の行った事は決して罪などではない。」 「君が心を痛めてくれている事、本当に感謝する。」 「そこまで、紀世子を愛してくれた事を…感謝する。」 「それから。」 「もう紀世子を捜してはいけないよ。」 「進化の途中の姿は…、君にとっては少し、残酷だからね。」 「これ以上、君を傷つけるのは、本意ではない。」 「だから今は。何もかも忘れて、お休みなさい。」 |
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